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アイン・ランドの代表作。長いし、小説としてはへたくそです。大仰な描写、延々としゃべりまくる饒舌な登場人物。すべては功利主義で進み、主人公の鉄道会社重役ダグニー・タガートは、ボーイフレンドよりも有能な男が目の前に登場するとあっさり乗り換えて、そのボーイフレンドも功利主義者なのでそれを平然と祝福するなど、失笑するような場面が満載です。
本書に人気があるのは小説として優れているからではなく、その思想に共鳴した人々が一種のカルトを形成しているからです。ソ連から亡命してきて、ひたすら国の規制を毛嫌いする彼女の思想は、かなりおめでたい自由放任実力主義です。世の中には、生まれつき有能な人と無能な人がいて、世界は有能な人のおかげで動いているんだから、そのエリートたちを(国の規制などで)邪魔してはいけない、というだけの話。本書でも、有能な人は生まれてずっと有能、そうでない人はずっと無能な寄生虫、という描かれ方は一貫しています。
本書を読んで感動し、ランド支持者となる多くの人は、自分こそはこの優秀な側の人間だと思っています。でも実際には、多くの人は自分が思っているほどは有能ではなく、社会的な評価の低さも実は単なる分相応だったりする場合がほとんどです。本書を絶賛する人は、いったい自分がランドの世界でどこに位置づくかをよく考えてみるべきでしょう。
著者のランドも「自分は優越人種なのだから通常のモラルには縛られない」と放言して25歳も年下の(既婚の)愛人を囲い、かれから別れ話を切り出されると逆上して破門など、自分の教えほどは功利主義的には生きられなかったようです。また彼女の死後、その弟子たちは派閥抗争を繰り広げて分裂を繰り返しています。彼女の「教え」は本当にそんなにいいのか? そういうことを考えながら、批判的に読むといいでしょう。
- 肩をすくめるアトラス (via nakano) (via dannnao) (via thinkeroid)