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Jun 6, 2009 11:54pm

三題噺(パルコ、檸檬、象)bysakstyle

  • sakstyle: 美奈はかつて象使いだったことがあって、私のアパートの裏庭に連れてきたこともある。彼女は象の足の冷たさに触れているのが好きなのだと言っていた。私はとてもではないが象に近づくことはできず、二階の窓からそっと窺うばかりだったはずだ。何故象なんだ、美奈。私のように猫も二階へ逃げてくる [http://twitter.com/sakstyle/status/2043863729]
  • sakstyle: 私は彼女の足に触っていることの方が好きだが、お気に召さなかったようで、彼女は私からもさらに逃げ出すべくアパートの屋根へと駆け上がっていく。彼女は孤独を愛する。私は孤独を怖れる。象から逃げてばかりいても仕方がない。雄にしては雌のような名前で呼ばれている象から逃げてばかりいられない。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2043945507]
  • sakstyle: そうやって窓から上半身を突き出そうとして、私は強かに後頭部を窓枠に打ち付けることとなった。それは窓枠でもあり、窓そのものでもあった。頭をさすりながら目を開けてみれば、そこは地下鉄の車内で、つまりは私はうたた寝して夢を見ていたのだった。美奈は絵描きであって象使いではない。当たり前だ [http://twitter.com/sakstyle/status/2044010773]
  • sakstyle: 家に帰ったらよく冷えたビールが飲みたい。そして、今日テレビでやっていた『千と千尋の神隠し』を見るのだ。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044093275]
  • sakstyle: そのとき、美奈にこの夢の話をしよう。何故か、美奈が象使いになっていて昔、私たちが住んでいたアパートに象を連れてくるというこの夢は、千と千尋の神隠しを見ながら話すのにちょうどいいような気がした。それとも美奈はまだ仕事を終えていないだろうか。「カトリーヌ」の絵が描き上がらないのだ。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044123201]
  • sakstyle: 走る地下鉄のかすかな唸りの中で、昔住んでいたアパートのことを思い出してみる。地下鉄の窓に、疲れ果てた私の顔が映りこんでいる。目はどこか虚ろだが、私は決して疲れていない。裏庭によく遊びに来ていたコロボックルの愛らしい姿がありありと思い浮かんでいたからだ。美奈は彼らをよく描いていた。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044186202]
  • sakstyle: 彼らの食糧事情はとても厳しいものがあり、アパートに住んでいる人たちは彼らに思い思いに食べ物を分け与えていた。彼らは何故か酸っぱいものに目がなくて、私と美奈は彼らに檸檬をよくあげていた。最初に檸檬をあげたのは美奈で、そのことによって彼らの酸っぱいもの好きが明らかになったのだった。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044259647]
  • sakstyle: たぶん、彼女は何をあげようか考えているとき、いちばんはじめに目のついたものを選んだだけで、何も考えていなかったのだと思う。だいたいにおいて彼女はいつもそうだったし、そういうところが、私は少し気になっていた。/「なんで檸檬なの?」/「なんかおしゃれな感じでしょ?」 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044276961]
  • saksytle: パルコは無理だ。[http://twitter.com/sakstyle/status/2044290005]
  • sakstyle: 「なんでパルコなの?」/「なんかおしゃれな感じでしょ?」私は、パルコと美奈がどうして繋がるのかが分からなかった。渋谷なんて映画を見に行くくらいでしか行かない。家具を買いに行くなら、IKEAに行くだろ。[http://twitter.com/sakstyle/status/2044396831]
  • sakstyle: 美奈は、コロボックルの絵を描いた。檸檬を食べる檸檬の絵を描いた。そして、「檸檬の味を描くんだ」と言った。「檸檬の味を描け」とはイッテンの言葉だったはずだ。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044426191]
  • sakstyle: 彼女の描いたコロボックルの檸檬の絵は、巡り巡って、檸檬の部分がカーテンの柄になった。あのカーテンがかかっている部屋に住むと、いつでも酸っぱさを味わうことになるのだろうか。酸っぱさを好むコロボックルにはいい部屋だろう。私は象も檸檬も苦手だった。地下鉄の窓に、疲れ果てた私の顔が映る。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044499685]
  • sakstyle: 寝てしまった人を見て、寝たいなあと思う。というか、もう寝てたはずなのに。でも、寝れない。電話がかかってきた。[http://twitter.com/sakstyle/status/2044722325]
  • sakstyle: 電話は美奈からだったが、電話の向こうで喚いているのは美奈ではなかった。「オナニー」「死んだ」という、まるで繋がりが見えてこない単語が繰り返されるばかりで、意味をなしてこない。「物事には二重の意味がある」だって? たった一つの意味だって分かりやしない。そして地下鉄の天井が敗れる。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044781267]
  • sakstyle: 私がこれから言うことを聞いて、誰がそんな話をを信じられるのかと尋ねる向きもあるだろうが、とにかくそれは地下鉄の天井を貫いたのだ。どうせ「巨大な檸檬」が降ってきたのだろうと思うかもしれないが、それは「巨大な檸檬」ではなくて象の足だった。象が地下鉄に乗り込んできた。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044841788]
  • sakstyle: 「象消えろ、象消えろ」と向かい側に座っている客が呟き始めた(ように見えた)。そういえば、『象の消滅』は持っていたはず。村上春樹で唯一持っている本だと思って、本棚を眺めてみたらあったのは『パン屋再襲撃』だった。目次をみたら「象の消滅」があった。文庫化でタイトルが変わったのか。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2044955290]
  • sakstyle: ふと我に返る。地下鉄には象がいる。私は「象消えろ、象消えろ」と呟いていた。彼女は僕の恐怖を嗅ぎ付けたのか、目を輝かせた。美奈は象を怖がらないでと言っていたと思う。怖がらなければ、象との仲は何一つ問題ないものとなる。何一つ問題のないカップルなんて、そうそういないけど、象を怖がるな。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2045022340]
  • sakstyle: 象が腰を下ろした。前脚をちょっと折っていて、私はおそるおそるそこに足をかけた。象の足の肌触りなど分からない。美奈は象使いではない。美奈は檸檬の絵で一躍有名になったデザイナーだ。象使いは私だ。象使いは私なんだ。地下鉄を出る。地下鉄から象にまたがって出なきゃならないんだ。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2045096174]
  • sakstyle: 夏コミに当選したのかどうか、友人から連絡が来ないのでまだ分からない。だが、その結果を知るためには、象に踏まれて地下鉄の中で死ぬわけにはいかない。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2045116579]
  • sakstyle: 地上に出ると、当然真夜中だからあたりは暗くて、そこは渋谷でもあり大通でもあった。パルコがある。パルコの前のスクランブル交差点には、人が誰もいなかった。公園通りから伸びる狭苦しい道には、人が誰もいなかった。真っ暗な中に、ただパルコだけがあった。象に跨った私だけがいる。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2045213386]
  • sakstyle: 公園通りも大通公園も背にして、象は走り出す。さっきの電話の謎を突き止めるために、美奈が縞パンを穿いているかどうか、ではなくて、陸条が縞パンを穿いたのかどうか、ではなくて、美奈がちゃんと絵を描き終えることができたのかどうか確かめたいと思った。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2045273451]
  • sakstyle: いや、ほんと縞パンには興味がない。[http://twitter.com/sakstyle/status/2045287618]
  • sakstyle: これでこの話はおしまいだ。こんな時間まで起きていたから、お腹が空いてきた。ああ、檸檬が食べたい。檸檬の味がする絵は描くことができるのか。 [http://twitter.com/sakstyle/status/2045333679]
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